平成4年度までの研究でアゾベンゼン基を持つペプチドH-azoAla-Gly-Glyあるいはピレニル基を持つペプチドH-pyrAla-Gly-Glyを認識するモノクローナル抗体の作製に成功していた。これらの抗体はアゾベンゼン基やピレニル基を高特異的に認識、結合する。平成5年度はこれらの抗体を用い、いくつかの応用展開を行った。 1.抗ピレニル抗体によるピレニルアラニンの光学分割 上のテトラペプチドを抗原として作製した抗体はピレニル基だけを認識するのではなく、ピレニル基を側鎖にもつアミノ酸(ピレニルアラニン)のDL識別をも行うことが明らかになった。この結果は、非天然アミノ酸の光学分割が抗体によって可能になる事を示している。 2.抗アゾベンゼン抗体によるNAD^+/NADHのメディエーション機能の光制御 アゾベンゼン基に対する抗体はトランス体だけを結合し、シス体は排除することが明らかになっていた。そこでアゾベンゼン基を結合したNAD^+/NADHを合成し、その電子メディエーション作用を抗体存在下で測定した。暗下ではNAD^+/NADHに抗体が結合しメディエーション反応が阻害されたが、紫外光照射によりアゾベンゼン基をシスにすると抗体が脱離して阻害は起こらなかった。この原理によりNAD^+/NADHによる電子メディエーションを光制御する道を開くことができた。 3.抗アゾベンゼン抗体の基板上の抗原への結合の光制御 マイカなどの基板表面にアゾベンゼン基を単分子膜として結合させ、基板表面への抗体の結合を光で制御した。この手法はたんぱく質の基板上への光パターニングにつながるものである。
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