研究概要 |
これまでの研究から,かさ高い疎水基を含む両親媒性高分子電解質は水溶液中において疎水基が会合してクラスターを形成し,その周囲を荷電セグメントが取りかこんだミセル状の構造を形成することがわかっている。また,このような両親媒性高分子電解質に極く少量共有結合した疎水性発色団は,疎水性相互作用により,クラスター内に包接され,いわゆる「個室化」現象が生じることもわかっている。発色団を効果的に個室化するためには疎水基の大きさ,形状,硬さ等の構造要因が重要である。 以上の,当研究代表者らのこれまでの知見に基づき,テトラフェニルポルフィリンを発色団として用いて,これを効率的に個室化するための研究を行った。モノマーとしてテトラフェニルポルフィリン亜鉛錯体(ZuTPP)を側鎔結合したメタクリルアミドを合成し,このモノマーと,種々な疎水基を同様に側鎔結合したメタクリルアミド,及び電解質モノマーとして2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とを3元ランダム共重合した。こゝで用いた疎水基はラウリル基,ミクロドデシル基 アダマンチル基,ナフチルメチル基である。個室化構造の確認には主としてNMRを用いた。また個室化の効果は,水溶液中の吸収・蛍光スペクトル,リン光スペクトル,レーザーホトリシスによる励起3重項吸収により調らべた。これらの結果から,シクロドデシル基が疎水基としてZuTPPの個室化には最も効果的であるという結論を得た。ミクロドデジル基のクラスター内に個室化されたZuTPPの光物理的挙動を調らべた結果,室温でもリン光を発っすること,室温以上の高温で強い遅遅蛍光を出すこと,励起3重項状態の寿命が著しく長いこと等極めて特異な個室化効果を見い出した。著しい長寿命励起3重項の化学反応への利用を研究中であり,光誘起電子移動反応において有効な電荷分離現象が認められている。
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