研究概要 |
土壌生成速度の測定と評価を行うためのベンチマークサイトとして選定した,温帯の意宇川流域(松江市南)の安山岩質と花こう岩質の二つの小集水域,熱帯のガド山流域(西スマトラ州パダン市東)の安山岩質小集水域で降雨と河川水の質と量を約3年間モニタリングした。各小集水域の土壌と母岩のトポシーケンスにもとづく,システィマティックなサンプリングも行った。 まず,これらのデータの特性を評価した。すなわち,降雨と河川水については,量と質の関係,地域性と季節性,酸性雨の影響等である。土壌については各小集水域のトポシーケンスの位置による系統的な変異が認められた。岩石についてはトポシーケンスの位置による系統的な変異は認められなかった。 以上のようなデータの特性をふまえ,著者の提案した理論式にもとづいて,各小集水域の岩石の風化速度,土壌の生成速度を計算した。この結果,(1)集水域からの岩石起源無機諸元素の年間アウトプット量の合計の実測値は,風化速度と土壌生成速度から計算される理論アウトプット量とよく一致することを認めた。これは理論式の合理性を裏づけている。(2)熱帯圏では温帯圏に比べ,岩石の風化強度が強いため風化速度の割には土壌の生成速度は大きくならない,ことが明らかになった。(3)トポシーケンスの効果では,尾根上の土壌生成速度は谷や低地より低い値を与えた。
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