研究概要 |
1.松江市南の意宇川の安山岩質小集水域(17.2ha)と花こう岩質小集水域(156ha)の,流出水にともなう各種無機成分(Si,Al,Fe,Ca,Mg,Na,K等)の年間流出量を,3年間にわたってモニタリングした。本研究の理論式による,岩石の風化速度と土壌の生成速度から計算される放出量は、上記測定値とよく一致した。このことは本研究による土壌生成速度の測定法の信頼性を裏づける。 2.同様の測定と計算を西スマトラ州のパダン市近効のガド山集水域で行った。又、文献値を利用して米国東北部ニューハンプシャー州のハバ-ドブルック集水域でも同様の比較を行った。 3.意宇川の安山岩小集水域より8.2ha,花こう岩小集水域より20haの単位集水域を選び土壌(15cmおきに105cmの深度まで)と新鮮な岩石のサンプリングを行った。収集サンプル数は安山岩集水域から,岩34点,土壌85点(17断面),花こう岩集水域から,岩石28点,土壌266点(48断面)であった。単位小集水域の岩石の平均組成は新鮮な岩石を谷底より6点ほどサンプリングした平均で,土壌の平均組成はトポシーケンスにそって谷底,中腹,山頂や尾根,より各2〜3ケ所,30〜60点ほどをサンプリングした平均で,推定して良いことがわかった。 4.本研究により単位集水域の岩石の風化速度が計算でき,酸性雨中和能の評価が可能になるだけでなく,世界の代表的集水域の生態学的安定性の基礎となる,土壌生成と土壌侵食の動的バランスについての知見を提出できる。土壌劣化や砂漠化が深刻な熱帯アフリカ等への適用が待たれる。
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