研究概要 |
(1)Aspergillus niger α-Glucosidaseの全一次構造および遊離SH基、S-S結合の位置を決定した。本酵素は2つのサブユニット(P1およびP2と仮称、分子量はそれぞれ約3万および約9万)から構成されている。両者を分離後、種々のProteaseおよび化学的切断法により断片化し、エドマン法を用いて全一次構造を決定した。その結果、P1は227個の、P2は719個のアミノ酸残基から構成されていた。また、24個の修飾アミノ酸(糖鎖付加など)の存在が明らかになった。P1はCysを2個、P2はCysを5個有している。5,5'-Dithiobis(2-nitrobenzoic acid)の分光滴定から遊離Cysは1残基と推定された。蛍光試薬を用いて遊離Cysとを修飾し、得られたペプチド断片の配列解析から、P2のCys^<75>と推定された。また、両サブユニットのLys-C Protease消化ペプチドを還元後、蛍光SH試薬である7-Fluoro-4-sulfamoy1-2,1,3-benzoxadiazoleを用いて修飾した。その結果、P1のCys^<38>-Cys^<14>、P2のCys^<232>-Cys^<236>およびP2のCys^<425>-Cys^<436>間にジスルフィド結合が存在していることが推定された。 Aspergillus niger α-Glucosidaseの触媒基の位置を推定するため、Mechanism-based inactivatorを用いてアフィニティーラベリングを行なった。親和標識試薬である1DL-1,2-anhydro-myo-inositol(AMIと略)を本酵素に作用させ、擬一次的失活を認めた。この失活反応の詳細な解析(拮抗阻害剤による失活防御、失活反応はMichaelis複合体経由であり、All or Non 型であること、酵素とAMIが1:1に反応すること、失活のpK値は基質水解反応のpKe値と一致すること)から、AMIは本酵素の触媒基(酸性側の解離基)を修飾することが明らかになった。AMI修飾酵素からP1およびP2サブユニットを単離し、HCl水解-GLC分析を行なったところ、P2のみからInositolが検出された。従って触媒基の一つはP2サブユニット内に存在することが推定された。
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