研究概要 |
(1)X線構造解析用結晶の調製 糸状菌結晶α glucosidaseの全一次構造の決定が終了したので、本酵素のX線構造解析用結晶の調製を行い、X-線構造解析を試みたが良好な回折像が得られなかった。この理由は本酵素が糖タンパク質であり、このため糖部分が結晶中でゆらいでいるためと考えられ、今後は糖部分を除いた結晶の調製を試みたい。また、放射性同位元素でラベルしたConduritol-B-epoxideの合成を行ない、この化合物を用いた酵素の修飾による触媒部位の解析を本酵素のみならず他の起源α-glucosidaseにも試みた結果、触媒活性に直接関与しているアミノ酸残基はアスパラギン酸であることが判明した。 (2)D-Glucal等の水和反応の解析 二重結合を有する特殊基質(上述目的の項)にα-Glucosidase,Glucoamylase,β-Glucosidase,TrehalaseやCellulaseを作用させ、水和反応が生じることを認めた。この反応はMichaelis複合体を経由するものである。生成物の構造解析から、二重結合への水分子の攻撃方向を推定した。 OH^-は通常の基質水解反応によって生ずる生成物のアノマー型に一致する方向から付加するのに対し、H^+は用いた基質や酵素によってトランスとシスの両方向の場合があることが判明した。 (3)糸状菌α-Glucosidaseを構築するサブユニットの役割 糸状菌α-Glucosidaseは二つのヘテロサブユニット(P1,P2)から構成されている。これら両者のいずれに触媒部位が存在するか調べ、自殺基質の結合するサブユニットはP2であることが明らかとなった。また,本酵素の遺伝子解析の結果、P1とP2サブユニットは同一構造遺伝子上に連続的に並んでいることが明らかとなった。 (4)糸状菌α-Glucosidaseの糖鎖構造の解析 本酵素は約25.5%の糖を含んでいる。アミノ酸配列の解析から13ヶ所以上の部位にAsn結合型糖鎖の存在が示唆された。これらの糖鎖をN-glycanaseで切り出し、HPLCで単離精製後、NMRやメチル化分析によりAsn結合型糖鎖の全構造の決定を行なった結果、α-ガラクトフラノシル残基をもつ3種の新しい糖鎖構造を含む7種の糖鎖構造を明らかにした。
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