細胞内へ外部情報が伝達される過程で、高度不飽和脂肪酸を結合するリン脂質分子種が重要な役割を果たしている。外部刺激により活性化されたホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC(PIPLC)により、ホスホイノシチドより生成したジアシルグリセロールから高度不飽和脂肪酸が遊離し、エイコサノイドへ転換される分子機構をヒト血小板を用いて明らかにした。申請者はPIPLCアイソザイムのうちPIPLC-αをラット肝臓小胞体より純化することに成功した。しかし、このものはPIPLC活性を持たず、新しいタイプのプロテアーゼ活性を有していた。そこでER-60プロテアーゼと命名し、本酵素が小胞体におけるタンパク質のクオリティーコントロールに関与している可能性を示唆した。本年度はヒト血小板のモノ及びジアシルグルセロールリパーゼのアラキドン酸遊離における役割を明らかにする一方で、ラット肝臓小胞体よりさらに新しいプロテアーゼを発見し、ER-72プロテアーゼと命名した。本酵素はER-60プロテアーゼの持つCGHCモチーフを3個有していた。そして、小胞体内腔に局在するタンパク質を水解したが、システインプロテアーゼ阻害剤でその活性は抑制された。その上、本酵素活性はホスファチジルイノシトールなどの酸性リン脂質で調節されることを示した。
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