(1)ウレアーゼ遺伝子の大腸菌内での発現 高温性バチルス属TB‐90株ウレアーゼ遺伝子は3種の構造遺伝子ureABCと6種の非構造遺伝子ureDEFGHIで構成されている。この9個の遺伝子を大腸菌に導入してウレアーゼを生産させた場合、発現したウレアーゼの大部分は不溶性の細胞内顆粒を形成してしまい、活性を持つ可溶性タンパクとして回収される量はわずかであった。ただしこの回収量は培地条件や培養時間に応じて変化したので、種々の調節タンパクによる影響を調べるための前段階として、培養条件の検討を行った。その結果、LB培地では可溶性ウレアーゼは全く生産させられなかったのに対し、アンモニアを含まないM9培地にLB培地を10%添加した培地では培養後14〜16時間目に大腸菌可溶性タンパク1mg当たり約35Uの比活性でウレアーゼを安定して生産させることができた。なおこの比活性を得るには、形質転換直後の大腸菌を培養する必要があった。 (2)ウレアーゼタンパクの翻訳段階における調節 ureA遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の5′末端領域にβ‐ガラクトシダーゼ遺伝子のORFをインフレームで挿入し、ureA遺伝子の転写・翻訳量をβ‐ガラクトシダーゼ活性を指標として定量的に測定できる系を構築した。この系で、ureEFG3種の遺伝子にそれぞれ個別にフレームシフトを導入し、それぞれの場合に発現されるβ‐ガラクトシダーゼ活性を測定したところ、その活性はureEFGすべてが正常なときの活性と変化が認められなかった。すなわち、ureEFG遺伝子産物はureA遺伝子上流のプロモータならびにSD配列からの転写・翻訳には全く関与していないことが示された。これより、ureEFG遺伝子産物はウレアーゼタンパクの翻訳後の成熟過程に関与しているものと推定できる。
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