短日処理葉1200枚分の滲出物より精製した活性画分(200μg)はODS-HPLCで単一ピークを示し、O.01ppmで花芽形成活性を示した。しかしながらこの活性画分には夾雑物がまだ含まれていることが判明し、これをDEAE-sephadexイオン交換カラム、Sephadex G-25 superfineゲル濾過カラムおよびTOYOPEARL HW-40Sゲル濾過カラムクロマトグラフィーにて精製、0.0002ppmという極めて低い濃度で活性を示す画分10μgを得ることができた。200μgの活性画分に含まれていた夾雑物はHPLC展開溶媒に由来する塩であるとわかったため、精製方法を変更し更に大量のタバコ葉1900枚を用い活性物質の抽出精製を行った結果、最終的に0.0002ppmで花芽数を1.5倍に増加させる活性画分53μgを得た。活性物質は水溶性の塩基性物質であり、透析実験の結果から活性物質の分子量は1000以下であることがわかった。また、タバコ葉からの滲出を行う前に葉柄切断面がカロースの形成により塞がれるのを阻止する目的でEDTA・2Na水溶液による切断面の侵漬処理を行い、得られた滲出物の花芽形成を検討した。TPYOPEARL HW-40Fカラムゲル濾過クロマトグラフィーの画分について花芽形成活性を試験したところEDTA無処理の場合にも出現する低分子の活性画分に加えて新たに高分子の活性画分が見いだされた。この高分子活性画分は、分子量約2万5千で低分子活性物質と同じく水溶性であった。本研究で採用した生物検定法は活性サンプル無投与の対照でもある程度の花芽が発生する系であるため得られた活性物質が花芽形成を促進するのみなのか、花成ホルモン活性と呼ぶべき花芽誘導活性も示すものであるかは、別個に調査すべき問題である。その実験の一つとして、本活性画分を短日性のアオウキクサLemna paucicostataに長日条件下で与えたが、Lemna植物体に花芽を誘導することはできなかった。
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