1.モデル化合物セロオリゴ糖合成法の改良:既に申請者らが開発した8量体までのセロオリゴ糖の合成法に検討を加え、合流型合成法による高収率合成に成功した。本法は更に高重合セロオリゴ糖(DP=16さらに32)の合成にも適用されると考えられ、セルロースの化学合成法として現在最も有力な方法である。 2.長鎖アルキルセロオリゴ糖の合成:セロオリゴ糖の還元性末端基のみに長鎖アルキル基が結合した、目的化合物は上記合成法のセロオリゴ糖誘導体から調製された。これらの化合物は全て(現在のところDP=1〜2)、予想通りサーモトロピックスメクチック液晶性を呈し、分子中の疎水基が認識部となり、高度に配向することが、証明された。 3.平行鎖セルロースの調製と天然セルロースの分子配向:上記のモデル実験結果に基づき、まずセルロースの還元性末端基に長鎖アルキルキを導入する方法を確立し、種々の長鎖アルキルセルロース誘導体を調製した。これらの化合物はモデル化合物の結晶構造解析から類推すると、その分子配向は平行鎖セルロースのそれに一致するはずである。しかしながら、得られた回折図はセルロース-IVとIIとの混合物に近いものであった。これらの結果は得られたIVは平行鎖である(すなわちIV_I)とすると、本研究で平行鎖セルロースが調製されたことになるが、今後セルロースIV_IまたはIV_<II>であるかを詳細に検討することが急務である。 本研究期間では、天然セルロースの分子配向について決定的な結論に至ってはいないが、長鎖アルキル基をセルロースの還元性末端基に導入することにより、セルロース部分の分子配向を制御し得ることが証明された。これらの結果は今後、セルロース-IおよびIIの分子配向の決定および分子配向制御によるセルロースの機能化に関連して極めて重要な成果であると考えている。
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