温潤状態のパルプシートの電気的性質を解析することにより、古紙パルプに含まれている添加薬品の付着状態を評価する方法の開発を目的に、本年度はその基礎となる下記事項について検討を進めた。 1.モデルシートの調製・解繊とその製紙特性(村上) まず、添加薬品としてポリアクリロニトリル系の乾燥紙力増強剤を選択し、これを添加したモデルシートを作製した。次いで、80°Cの急速老化処理を施したのち、本研究のため購入した高濃度離解機を用いて解繊パルプを調製、電気的性質測定のためのシートを作製した。他方、老化・解繊処理前後のパルプの製紙特性についても検討を加え、紙力増強剤の効果が老化・解繊後には消失することを確認した。 2.解繊パルプの電気的性質(山内) まず、紙力増強剤の湿潤パルプシートの電気的性質に及ぼす影響につして検討したが、この際媒体として濃度の異なる一連の電解質水溶液を使用した。その結果、(1)再現性ある測定結果を得るためには解繊パルプを繊維フラクションと微細物フラクションに分別して測定する必要のあること、(2)紙力増強剤を添加したパルプの電気的性質は無添加のものに比べて著しく異なり、電解質解離作用を持たない水の量が増大すること、(3)規格化した電気電導度(EC指数と仮称)がパルプシートの強度的性質と相関すること、などが判明した。次いで、老化・解繊処理前後の湿潤パルプシートの電気的性質の検討に移った。その結果、解繊処理の条件(脱墨剤添加の有無など)により湿潤パルプシートの電気的性質が変化することを認めたが、その詳細については目下検討中である。
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