本研究は、古紙パルプ中に残留している添加剤の量およびその存在状態を評価するための手法として、湿潤シートを対象とする電気伝導度側定、乾燥シートにおけるフーリエ変換全反射赤外線(FT-IF-ATR)スペクトル法を取りあげ、カチオン性ポリアクリルアミド系乾燥紙力増強剤を添加した手すきシートのリサイクル処理における変化を検討したものである。 1.湿潤シートの電気伝導度は、添加剤付着率の増加に伴い低下するが、その程度は少量の添加で著しく、また添加剤のカチオン当量の増大に伴って顕著になる傾向のあることが判明した。 2.リサイクル処理に伴う湿潤シートの電気伝導度の変化は、無添加シートでわずかに認められたが、添加剤を含むシートではほとんど観察されなかった。 3.添加剤を含むシートと含まないシートとの間の差スペクトルを利用して、添加剤付着量を定量する方法を提案し、この方法による結果が化学分析法のそれと一致することを実証した。さらに、この方法を応用することにより、パルプ繊維の叩解の程度に拘らず、パルプ繊維に付着している添加剤繊維表面近傍に留まっており、弛緩した繊維壁へのもぐり込みが認められないことも判明した。 4.パルプ繊維に付着している添加剤は、リサイクル処理によって一部脱離するが、その程度はかなり小さく、1回の処理で10%程度であった。また、リサイクル処理に伴う引張強さの低下の程度は、無添加シートに比べて、添加シートで大きく、いったんパルプ繊維に付着した添加剤の効果が急速に低下するものと推定しているが、その詳細については今後の検討課題であると考えている。
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