研究概要 |
血小板活性因子(Platelet activating factor;PAF)は、血小板凝集、好中球および単球活性化作用、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血圧降下等の様々な作用を有し、端息、胃炎等の各種病態のメディエーターとして知られる物質である。従って、このPAFの拮抗作用を示す化合物は、これらの病気の予防、治療薬として期待される。 本年度の研究成果としては、PAFによる血小板凝集の阻害物質として海綿Theonella sp.よりマクロリド化合物であるBistheonellide Aと別のマクロリド化合物であるSwinholideAを、海綿Niphates sp.よりピリジンアルカロイドであるNiphatesine Aを、海綿Hyrtios sp.よりセスタテルペン化合物であるHeteroneminを、それぞれ単離し、それらの化学構造をNMR,MS等のスペクトルデータに基づいて同定した。また、好中球をA23187で刺激したときのPAF産生阻害物質として海綿Luffariella sp.よりセスターテルペン化合物であるLuffariolide Aおよび別のセスターテルペン化合物であるManoalideを単離し、上記と同様の方法に基づいて同定した。今後、これらの化合物について50%阻害濃度(IC_<50>,μg/mL)を測定する予定である。一方、未同定の海洋菌株の培養液の粗抽出物に、PAFによる血小板凝集の阻害作用が見い出されたので、現在、この活性を指標にしながら活性成分の分離、精製を検討中である。
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