研究概要 |
1.まず実験に用いる培養系として、クズPueraria lobata,アロエAloe africana,マオウEphedra distachyaおよびカンゾウGlycyrrhiza uralensis,ホザキアヤメCostus speciosusのin vitro培養系を確立した。このうち本年度は、クズおよびマオウのカルス培養系での解析を行なった。 2.クズ培養系は、原植物の生産するイソフラボン系配糖体を高収量で生産し、それらの大部分がグルコース6位のマロニルエステルとして存在することを明らかにした。この系に化学的ストレスとして各種エリシターを投与してその効果を検討した。ジャガイモ疫病菌由来の糖タンパク画分あるいは塩化第二銅添加では、クズのファイトアレキシンであるツベロシンの生産が誘導されたが、イーストエキス添加では通常の代謝産物の生産蓄積と伴に新規化合物3種の生産が認められ、構造解析の結果いずれもイソフラボンアグリコンであるダイゼインの二量体であることが判明した。また、イーストエキス処理では、すでに存在したイソフラボン系配糖体マロニルエステルの大部分が短時間の内に、メタノール不溶性の結合型になることを見出だした。各種阻害剤を用いた解析から、ダイゼイン二量体や24時間以降に蓄積するイソフラボン系配糖体は、de novo生合成によるものであることが判り、また短時間で不溶性となったインフラボン系配糖体は胞細壁のリグノセルロース画分に存在することから、これも生体防御機構の一部と考えられ、その結合様式、関与する酵素などを検討中である。 3.マオウの培養系ではイーストエキス添加で2種の新規化合物の生産が誘導され、それぞれクマロイルグリシン、クマロイルDアラニンと同定された。この系をエリシターのアッセイ系としてイーストエキスを分画しマンナン糖タンパクを活性分子として単離した。
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