研究概要 |
ダイナミシンやエスペラミシンのようなエンジイン型抗癌抗生物質の新規な化学構造と強力なDNA切断作用との関連性が追究され,幾つかの興味ある知見が得られた。特に,ダイナミシンによるDNA切断に対するDNA高次構造の影響に関して,(1)ステム・ループ構造DNAに対する切断部位は2本鎖状態のステム部分に集中すること,(2)B型とZ型とを同時に含むDNAにおいては,B-Z接合領域の若干の塩基で著しい切断の増強が認められること,(3)バルジ構造をもつDNAに対しては,バルジ塩基近傍の反対鎖に顕著な切断増強が検出されることがわかった。これらの現象は,ダイナミシンがインターカレーションによってDNAのマイナーグルーブで特にプリン塩基と相互作用していると考えると合理的に説明することができる。DNAの特徴的な高次構造と生物学的機能との関連性が明らかになりつつあるので,ダイナミシンのこのようなコンホメーションに依存したDNA切断は極めて重要である。他方,エンジイン型化合物による高次構造RNAの切断を始めて発見したが,これは今後の展開が期待される。
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