研究概要 |
糖機能の解明およびその応用である糖鎖工学を遂行する上で、オリゴ糖の構造解析および糖と蛋白質の相互作用様式を知ることはきわめて重要である。この目的のために、本研究では細胞接着に重要な糖鎖であるsialyl Le^Xの立体配座解析の解析および立体構造既知の蛋白質中の糖-アミノ酸相互作用様式の解析を行った。 1.sialyl Le^Xの立体配座解析 種々の条件で本糖鎖の結晶化を試みたが成功しなかったので、その立体配座解析を分子力学法で行った。糖鎖を構築する上で、単糖をどのような順序で連結するかは、糖鎖の生合成の観点からも興味深いが、これまで殆ど検討されていなかった。本研究ではこの問題を考慮した解析を行った。その結果、安定な立体配座は連結順序に依存することが確認された。今回の解析で得られた安定立体配座の中には他の研究者によって報告されている核磁気共鳴のデータを良好に説明する立体配座が含まれている。 立体構造既知の蛋白質中における糖-アミノ酸相互作用様式の解析 単結晶X線解析が行われている蛋白質中において,各種の糖がどのように蛋白質内部のアミノ酸と相互作用しているかを検討した。解析に用いた蛋白質はProtein Databankに登録されている72種である。相互作用は水素結合、非結合相互作用および糖-芳香族環相互作用に分けて検討し、N-acetyl-glucosamine、arabinose、fucose、galactose,glucose,mannose,sialic acidおよびzyloseの結合部位の特徴を解析した。その結果、これらの糖の結合部位にはほぼ共通の様式があることが明らかになった。また糖の各官能基と特異的に結合するアミノ酸残基が各糖毎に存在することおよび蛋白質中で糖を認識する部位は特異的な構造を取っていることも明らかになった。
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