研究概要 |
1986年に我々はニジマス魚卵ポリシアロ糖タンパク質分子中に新しい単糖残基デアミノノイラミン酸(KDN)の存在を見出した。それ以後、今日に至るまで国内外においてKDNにまつわる研究が行われでいる。例えば、1989年のYu.A.Knirelらによる呼吸疾患を惹起する細菌の莢膜多糖中にKDN残基の発見、1992年にはフランスのG.Streckerらのグループによって両棲類卵ゼリー中にKDN残基を含む糖タンパク質の発見などがある。今後ますます多くの生物種にKDN-含有複合糖質が見出されるものと考えられる。本一般研究では、すでに見出され確かな構造研究が行われているKDN-複合糖質分子のKDN-糖鎖の生合成機構の解明と各種のKDN-転移酵素の同定・活用を目指した研究を行っている。その結果平成4年度に得られた実績について概要を述べる。 (1)CMP-KDN合成酵素の同定・部分精制とCMP-[^<14>]KDNの調製:-KDN-糖鎖の生合成機構解明および種々のKDN-転移酵素の検索・同定を行なうに当って、^<14>C-標識CMP-KDNドナー基質の入手は不可欠である。(KDN)GM3が見出されたニジマス精巣を材料にし、KDNとCTP(シチジン5'-トリリン酸)からCMP-KDN合成を触媒する酵素、CTP:CMP-3-deoxynon-ulosonate cytidylyltransferase(CMP-KDN合成酵素)活性を見出し、部分精製ならびに酵素の諸性質を調べた。本酵素はCMP-KDN合成活性が極めて高く、例えば仔牛脳由来のCMP-NeuAc合成酵素では収率が非常に低かったCMP-KDNの合成が容易に行えるようになった。その結果、必要量のCMP-[^<14>C]KDNの実用的合成が可能となった。[詳細はJ.Biol.Chem.(1993)268,Feb.issue(印刷中)]。 (2)KDNα2→3Galβ1→配列および(→8KDNα2→)_n構造形成に関与するKDN-転移酵素の検索:-上記(1)でCMP[^<14>C]KDNドナー基質が調製可能となったので、種々のKDN-糖鎖の生合成に関与するKDN-転移酵素の検索・同定の研究を行えるようになった。これらKDN-転移酵素活性の同定はシアロー複合糖質を相当するKDN-複合糖質に改変することを可能にする。CMP-[^<14>C]KDNをドナーとし、Galβ1→Glcβ1→ceramideおよび(→8KDNα2→)_n鎖をもつKDN-gpをアクセプター基質とし酵素活性を調べた結果、各アクセプターに対して高い転移活性を見出している[未発表]。
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