軽水炉で生成するクラッドの多くは、その結晶構造がスピネル型のフエライトである。このフエライトにおいては、構成イオン種が四面体、八面体のどちらのサイトを選択するかの目安となるバルクでのイオンのサイト選択性に関し、かなりのデータが蓄積されている。そこで、バルクにおけるイオンのサイト選択性を表面の吸着サイトへ適用しようと試み、γ-Fe_2O_3への^<57>Coの吸着に及ぼすマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの前処理イオンの効果を購入のメスバウアー低温発光分光装置にて調べた。その結果、予め、八面体選択性が高いマグネシウムで前処理後、八面体選択性が高いコバルトを添加するとクラッド表面でのコバルトフエライト生成が抑えられることを見い出した。一方、四面体選択性が高いカルシウムで前処理するとコバルトフエライトの生成が容易となることも明かとなった。そこで、この四面体と八面体に関するバルクでのサイト選択性が表面における吸着サイト選択性に適用できるか否かを、四面体選択性が最も高い亜鉛イオンについて実験を行ったが、前処理のない時と同一の結果で、予測に反した。この原因は亜鉛のクラッドへの吸着がコバルトと比べて弱い点にあることが、亜鉛イオンの固液間における分配比の測定から明かとなった。今後は、さらに多くのイオンに関する吸着実験から、バルクにおけるイオンのサイト選択性と表面の吸着サイトとの関係について、より不変的な規則を見いだしたい。また、これらのデータをもとにクラッドへのコバルトの吸着機構を明かにし、放射能蓄積に対する低減化対策を提案したい。
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