本年度購入した振とう式オートクレーブを用い、100℃の水溶液中にて、γ-Fe_2O_3とFe_3O_4クラッドへのコバルトイオンの吸着に及ぼすマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛などの前処理イオン効果を調べた結果、以下のことが明かとなった。 (1)クラッドのバルクにおいて八面体選択性が高いマグネシウムイオンで前処理後、コバルトイオンをクラッド表面に付着すると、マグネシウムイオンはクラッド表面の八面体位置に吸着されるので、八面体位置を好むコバルトとクラッドとの反応が阻害され、コバルトフエライトの生成が抑えられることがメスバウアー発光分光の結果わかった。 (2)クラッドのバルクにおいて四面体選択性が高いカルシウムやストロンチウムイオンで前処理後、コバルトイオンをクラッド表面に付着すると、コバルトは八面体位置にのみ吸着されるので、クラッド表面でのコバルトフエライトの生成が容易であることもメスバウアー発光分光の結果わかった。 (3)クラッドのバルクにおいて四面体選択性が最も高い亜鉛イオンで前処理後、コバルトイオンをクラッド表面に付着すると、亜鉛イオンはクラッド表面の四面体位置に吸着され、クラッド表面でのコバルトフエライト生成が最も容易であろうと推定したが、その予測に反し、実験結果は前処理を行わない場合と同一であった。この事実は固体クラッドに対する溶液への亜鉛イオンの分配比が小さいことで説明出来ることが明かとなった。
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