研究概要 |
高等動物の脳には極めて多くの神経細胞が存在し、この多くの神経細胞間にシナプスが形成されている。認知、学習、記憶などの高次神経機能はこの数多くの神経細胞間に形成されているシナプス形成によるネットワークによって実現されていると考えられる。このシナプスの形成は高い特異性を持った神経細胞間での認識によって行われており、それぞれの神経細胞では特異的な認識のための分子を発現していると考えられる。これらの分子は、極めて限られた細胞のみで発現していること、分子の構造が予想できないことなどから、全く明らかにされていない。我々はこれらの分子をコードする遺伝子の発現を制御する転写調節因子を同定することによって、特異的なシナプス形成のメカニズムを明らかにすることを計画している。極めて多様な神経細胞の特異性は転写調節因子の特異性によって実現されていると考え、PCR(polymerase chain reaction)の生成物を、a,asymmetric PCRによる塩基配列の決定。b,SSCP(single strand conformation polymorphism)法。c,4塩基認識制限酵素による消化などによって多様性を検出し、極めて大きな遺伝子ファミリーを形成している転写調節遺伝子群を検出する方法を開発した。この方法によってマウスゲノム中に百種以上のホメオボックスをモチーフとする配列を検出した。さらに、RT-PCR法によってこれらのホメオボックス配列の一部は、マウス脳内で特異的に発現していると考えられる結果を得た。
|