ラン藻と葉緑体の転写後制御因子であるRNA結合蛋白質(RNP)の機能と起源に関する研究を行った。本研究で得られた主な成果は次の通りである。 1.単細胞ラン藻Synechococcus PCC6301のRNPは葉緑体RNPのRNA結合ドメイン(RBD)と最も相同なアミノ酸配列をもつことを明らかにし、葉緑体RNPが古ラン藻起源であることを初めて実証した。 2.シロイヌナズナとタバコの葉緑体RNP遺伝子の構造解析を行い、葉緑体RNPが系統的に3つのグループに分類できることを明らかにした。 3.タバコの葉緑体RNPは、非ポリソーム画分中の16SrRNAイントロンをもつ前駆体tRNAやmRNA分子に結合して、RNA-RNP蛋白質複合体を形成していることを明らかにした。葉緑体RNPは、葉緑体RNA分子の安定性やRNAプロセシングに関与している可能性を示した。 4.ラン藻と葉緑体のRNPとは異なるタイプのRNPを発見した。これらのRNPは一個のRBDとC末端側にグリシンに富んだ領域をもつことから、RGP(RNA-binding Glycine-rich-Proteins)と命名した。RGPと葉緑体RNPは、それぞれ植物細胞の中で、核とオルガネラに特有の転写後制御機構を担っている可能性が強く示唆される。 5.ラン藻、葉緑体、核に存在するRNP蛋白質の構造と核酸結合特性を踏まえ、3者のRNP蛋白質の進化的関係について考察を加えた。
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