1.花芽の形成初期に働く遺伝子の機能解析。 シロイヌナズナのagamousu遺伝子が転写因子としての機能を持つことを調べるために、大腸菌内で作らせた遺伝子産物が特異的に結合するDNAの配列を決定した。また、agamousu遺伝子の全領域、MADSボックス領域、Kボックス領域をそれぞれ常時発現する35Sプロモーターに結合してシロイヌナズナ植物細胞に導入し、トランスジェニック植物を作製して花芽の形質を調べた。agamousu遺伝子の全領域を過剰発現させた場合のみならずMADSボックス領域またはKボックス領域を過剰発現させた場合も花の形質が異常になることがわかった。また、agamous遺伝子の抗体を作製してシロイヌナズナの花芽組織の核内においてagamous遺伝子と結合しているDNA領域を単離する試みを続けている。さらに、apetala3およびpistillata遺伝子の産物が転写因子としての機能を持つか否かをあきらかにするために、DNA結合領域を決定している。 2.花芽の初期発生過程に特異的に発現する遺伝子の同定。シロイヌナズナの若い花芽からmRNAを抽出し、転写量が少なく、花芽以外の組織で発現していないcDNAクローンを分離した。その中から、アミドフォスフォリボシル・トランスフェラーゼ遺伝子およびLEA遺伝子が得られた。 3.トランスジェニック・シロイヌナズナの作製と挿入突然変異体の同定。組織的にトランスジェニック・シロイヌナズナを作製して突然変異体を分離するために、in planta法および減圧法を改良し、条件を検討して約500株のトランスジェニック植物を新たに作製した。その中から、根と胚軸の光屈性がともになくなった突然変異体や胚軸が長くなり根毛の成長が異常な突然変異体、雄性不稔突然変異体などを分離した。現在、変異遺伝子の単離を試みている。
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