本年度は、主としてハナヤサイサンゴ幼生による底質選択性についての実験研究を行った。底質としては、前年度同様、各種粒度の赤土粒子石灰質粒子、及びプラスチックプレートを用いた。その結果、下記の事がわかった。 (1)ハナヤサイサンゴ幼生は、放出後1〜2週間で変態してポリプになる。しかし放出時の幼生には成熟度に相違があり、3週間後まで変態しないものが多い、変態しないで死亡するのも多かった。(2)定着率を比較すると、水面、プラスチックプレート、石灰質粒子、赤土粒子、石灰質プレートの順に大きかつた。水面というのは、水の膜の下面のことで、ポリプは、底盤で水の膜の下面に固着して、口盤を下にぶら下がるのである。こうして、ポリプは、座板や隔壁の骨格を形成する。(3)今回の実験では、赤土粒子と石灰質粒子の粒度による定着率の相違を詳しく調べることはできなかった。これは次年度の課題である。(4)ハナヤサイサンゴ幼生の放出時の成熟度がまちまちであったのに比して、トゲサンゴ幼生のそれは揃っていることがわかった。底質の粒度選択性の研究材料としては後者が優れているので、次年度はこれも材料として比較研究する。 次年度の課題としては、(1)底質の粒度選択性について、トゲサンゴ幼生を用いて精査することの他に、(2)幼生の底質選択行動を詳しく調べることと、(3)前年度に引続いてサンゴ数種の堆積排除能力を比較することがある。これらを完了すれば、予定の課題を、次年度で予定どうり終了して、当初の研究課題「サンゴ幼生の底質選択機構」について、解答を興えることが可能となる。
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