(目的)サンゴ幼生の底質選択については多くの研究があるが、堆積粒子を対象にした研究は殆ど無い。しかし、サンゴは繊毛、粘液で堆積排除能力があるし、軟底質上にも多くのサンゴが生育しており、プラヌラ幼生は、硬底質のみでなく、軟底質にも固着できると予想される。そこで、サンゴ幼生の底質選択の機構について調べることを目的とした。 (材料と方法)主として、プラヌラ幼生放出者であるヤサイサンゴ科のハナヤサイサンゴ、ショウガサンゴを用い、必要に応じて他のサンゴも用いた。底質は、主として、浜砂と陸地の赤土を用い、それらの粒度の相違による、選択性、排除能力などをしらべ、選択の機構の解明を試みた。 (結果と考察)(1)まず、ハナヤサイサンゴの生殖は、1年のうち、5月〜12月の上弦の月〜満月であることを確かめた。(2)ついで、プラヌラ幼生の底質への固着率をしらべ、ハナヤサイサンゴは7.1%と非常に低いことがわかった。これに比して、ショウガサンゴは、51.7%と桁違いであることがわかった。(3)次に底質に、バイオフィルムを作らせるとよいとの報告が多いので、しらべたが、バイオフィルムは無いほうが2倍以上も多く固着した。固着率は、石灰質板より、海砂がよく、粒徑は0.5mm、1mm、5mm、2mm、石灰質板の順序で小さくなった。もっと小さな0.25mmの海砂と赤土はどちらもプラヌラの固着がなかった。赤土は0.5mm、2.0mmと粒徑が大きくてもプラヌラは固着しなかった。固着の際のプラヌラの直径は1.5mmあるが、これより底質の粒徑が小さいときには、2〜3の粒子にまたがって、底板を分泌する。(4)サンゴの堆積排除は0.25mmの赤土に対しては無力となるが、これは、呼吸の障害となるためと思われる。小さい粒子が選択されないのは、同様な理由からと思われる。
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