研究概要 |
1.YAC(酵母人工染色体)プラスミドへoriTを導入した接合伝達性プラスミドpAY-YACBとpAY-YACEを新たに構築した.pAY-YACBはYACのテロメア連結部位へoriTを挿入したものであり,pAY-YACEはYACの通常のクローニング部位への挿入である.pAY-YACBはtra,mobを持つヘルパープラスミドにより可動化されて,大腸菌からパン酵母へ接合伝達された.これはパン酵母オートトローフコロニーの出現,サザンブロット,バックトランスフォーメーションにより証明された.pAY-YACBは線状染色体として酵母に存在するのでなくて環状プラスミドとして存在した.これが一般的なことかどうかもう少し実験例を集めなければならないが,pAY-YACの構築により巨大DNA用接合伝達ベクターの構築が現実的なものとなった. 2.土壌細菌Agrobacterium tumefaciensからpAYプラスミドがパン酵母へ接合伝達されることをはじめて見出した.これもオートトローフコロニーの出現,サザンブロット,バックトランスフォーメーション等により証明されている(投稿中). 3.土壌細菌A.tumefaciensのTiプラスミドはそのT-DNAを植物細胞へ伝達する系(T-complex)とTiプラスミド自身を他の土壌細菌へ接合伝達させる系(R-complex)を持っている.この両者について,その相互互換の観点から比較検討を行った.これは次年度も引き続き継続し行いたい. 以上の実験結果から生物界間接合の分子機構と進化についての研究上重要な手懸を得られたと考えている.
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