光合成反応中心の量比を調節している光化学系I複合体の合成制御がどのようなしくみで行われているかについて、二つの方向から研究を進めた。第一は、同複合体の安定な形成に不可欠なChlaの合成レベルでの制御の可能性を検討するもので、Chla合成の前駆体の動態を系I合成の促進・抑制との関連で調べた。その結果、(1)系I合成が抑制されている時、Mg-プロトポルフィリンとプロトクロロフィリド(Pchlide)が蓄積され、(2)系I合成が促進されるとその蓄積が解除されること、(3)また、これがPchlide還元反応活性の抑制によるので、系I合成の制御の結果によるのではない事が判った。これらの結果より、Chla合成が少なくともPchlide還元反応ステップで制御されていると結論された。第二は、系I複合体のアポ蛋白の合成レベルでの制御の解析で、PsaA/Bペプチドの合成速度の制御とペプチド伸長反応の動態との関連を検討した。PsaA/Bペプチドの翻訳過程を2種の阻害剤、ペプチド伸長阻害剤と翻訳開始阻害剤、を用いて、系I合成促進・抑制時の効果を調べたところ、(1)ペプチド伸長阻害剤は、系I合成抑制時には低く、合成促進により増大すること、(2)翻訳開始阻害剤でも選択的阻害効果が見られる事が判った。以上の結果は、ペプチド合成時のペプチド伸長のポージング時間が制御されている事を示唆する。ポージングがChlaとペプチド鎖の結合によると考えられるので、Chla合成の制御の結果ペプチド合成速度が変化していると推定され、系I合成の制御がChla合成制御を通じて蛋白の翻訳レベルで起こる事が考えられた。
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