研究概要 |
(1)アフリカツメガエルの精細胞から得たポリ(A)^+RNAを用いて、精子核塩基性蛋白質をコードする501塩基対からなるcDNAを新たに選別した。このcDNAは、その塩基配列をツメガエル精子核特異的塩基性蛋白質SP1〜6のN-末端23〜45ケのアミノ酸配列と対応させて比較した結果から、SP5をコードするものであると結論された。塩基配列に基づいて、以前に明らかにしたSP4のそれと比較すると、SP5とSP4はコーデイング領域で互いに83.3%相同であり、SP5はSP4より4ケ少ない74ケのアミノ酸残基からなっているが、両者はアルギニン・ダイマーを7ケ、同テトラマーを1ケのみ持つなどヒストンとプロタミンの中間型の塩基性蛋白質であるという点で共通していた。ノザン解析の結果、SP5はSP4と同じく一次精母細胞期に転写され精細胞に到る過程でポリAの短縮が起こるが、一次精母細胞での細胞当たりのmRNA量はSP5がSP4のそれの1/5であった。遺伝子に関するこれらの解析及びアミノ酸配列の比較から、ツメガエルの精子核塩基性蛋白質の遺伝子はSP1,SP2/SP3,SP4,SP6/SP5の3タイプをコードするものから成り、前2グループについては翻訳後の修飾によりそれぞれが形成される、という可能性が示唆された。 (2)ツメガエルSP4のcDNAをプローブとして、EcoRIおよびHindIIIで切断したゲノムDNAのサザン解析を行い、12kb,4kb,2kbの3つの断片にSP4遺伝子が存在することが明らかになった。制限酵素地図作成、遺伝子マッピングおよび一部の塩基配列決定等の結果を総合すると、12kb断片に3つ、4kbおよび2kb断片に各1つ、合計5つのSP4遺伝子が約20kbの領域にタンデムに並んでいると結論された。これらのSP4遺伝子はいずれも1ケのイントロンを持ち、そのうち2つの遺伝子について5'上流域の塩基配列を比較すると、約400bpにわたって85%以上の相同性を示す領域が3ケ所存在し、その配列は魚類や哺乳類のプロタミン遺伝子の5'上流域と共通性が高いことから、この領域が転写調節に深く関わっていると推定される。
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