研究概要 |
われわれは、アフリカツメガエル初期胚(16細胞胚)の背側細胞細胞質を同じ時期の受け入れ胚の腹側細胞に注入したとき、二次軸の形成がひきおこされることを明らかにした。この研究の当面の目的は、そのような活性をもった物質を精製し同定することである。まず、アフリカツメガエル16細胞胚をホモジナイズし、7,000g、10分遠心した。上清をさらに100,000g、10分遠心し、得られた上清は凍結保存した。この上清を受け入れ胚の腹側細胞に注入すると、約40%の胚において二次軸が観察される。このことから、ほとんどすべての活性がこの分画に回収されたことがわかる。なお、この分画を熱処理することによって活性が失われる。 上記の遠心上清をポアサイズ0.22μmのメンブレンフィルターを通過させた後、濾液をゲル濾過して6つの分画に分けた。それぞれの分画を濃縮し、二次軸形成の活性をしらべた。もっとも活性の高い分画を注射したとき、ほぼ100%の胚が二次軸を形成した。この分画に含まれている物質の量は、280nmの吸収量から推測すると、全体の4%以下であるから、この段階でもすでに活性物質はかなり濃縮されたことになる。つぎにこの分画をタンパク分解酵素やRNA分解酵素で処理し、活性が失われるかどうか調べる。得られた結果を参考にしながら、この分画をさらに精製していく。 この二次軸形成をひきおこす活性は16細胞胚の背側細胞に含まれているのであるが、この時期にはじめて現れるのか、それともそれ以前から存在しているのか、どこに存在しているのか。これらの情報は、この活性物質が背腹軸の決定や形成に際してどのような働きをするかを明らかにしていくうえで重要である。この点についても検討し、受精卵の植物極近くに存在していることを明らかにした。
|