無担体電気泳動装置を用いて、ヒトおよびマウスのX精子およびY精子の分離を行なった。ヒトおよびマウスの何れにおいても、二つのピークが得られ、ヒトの場合はキナクリン染色により、陽極に近い方のピークがX精子、遠い方のピークがY精子よりなるものと判定された。分画後の精子よりDNAを抽出し、Y染色体あるいは常染色体に特有な遺伝子のシーケンスをポリメラーゼチェインリアクション(PCR)法によって増幅し、両精子の分離の評価を行なった。ヒトにおいては、精巣決定因子のSRYおよび長腕の反復配列であるDYZ1をPCRで増幅してアガロースゲル電気泳動で生成物を調べたところ、キナクリン染色の結果と同様に陽極より遠いピークにY精子が含まれることが確かめられた。なおX染色体とY染色体でシーケンスの異なるアメロゲニン遺伝子についても同様な傾向が認められたが、この結果についてはやや検討を要する。これまでX、Yの判定が不可能であったマウスにおいては、Y染色体にいくつかのコピーが存在するpY353/Bと、常染色体上のミオゲニンについてPCRを行なった。その結果、後者は分離後の各分画に均等に含まれていたのに対して、前者は陽極より遠いピークの方にのみ含まれていた。つまりヒトの場合と同じように、陽極に近いピークがX精子、遠いピークがY精子よりなることが分った。ヒトのX染色体やY染色体に特異的なプローブを用いてのin situ hybridization については、パーコールで分離したX精子についてまず行なうように試料を準備中である。また分離したマウス精子の卵への顕微注入や、体外受精、胚移植について予備実験を行なった。
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