研究分担者 |
加瀬 友喜 国立科学博物館, 地学研究部, 主任研究官 (20124183)
遠藤 一佳 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80251411)
大路 樹生 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (50160487)
棚部 一成 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20108640)
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研究概要 |
本研究は,主としてサンゴ礁周辺の海底洞窟(後氷期の海面上昇によって沈水したと考えられる)を対象とし,熟練ダイバーの協力を得て,隠生的軟体動物の生体・遺骸の採集と観察を徹底的に行い,それらの分類・生態学的特徴と進化生物学上の意義を明らかにすることを目的として始められている. 平成5年度には,4月に宮古諸島下地島・伊良部島西岸の洞窟調査を一応完了するとともに,先に行った沖縄伊江島の資料を合わせて,二枚貝類48種の分類記載と生態学的特徴を総括した論文を刊行した(東京大学総合研究資料館研究報告35号).また,11月には小笠原諸島父島周辺の海底洞窟の予備的調査を行い,多量の資料を得た. その結果,次の点が明らかとなった. 1)海底洞窟の軟体動物は遺存種と考えられるアマガイモドキとオオベッコウガキを除くとほとんどが微小種である.2)捕食に対して比較的無防備な“生態的原始性"を示す種が多い,3)深海的な属をかなり多く含む,4)二枚貝には幼形進化と特異な繁殖戦略を示す種が多く,深海や寒海に似て卵栄養型や直達発生型(巨大な原殻Iを有し,数種で保育が確認された)の種が占める割合が高い,5)幼生がほとんど浮遊しないと思われる種でも西太平洋の広域に分布することがある.6)これらの特徴は捕食圧が低く,光合成が行われない貧栄養の環境に対する適応として解釈される.
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