研究課題
1.化石DNAを抽出するため、シベリアの上部更新統産のマンモス化石6資料およびケブカサイ1資料、日本の更新統産ナウマンゾウおよびハナイズミモリウシの化石資料を入手し、化石の組織よりDNAを抽出する手法を確立し、化石DNAの抽出に成功した。2.化石DNAを基質として約数百塩基対の増幅が期待されるプライマーを作製し、今回備品として購入したPCR装置を使い、化石DNAの増幅を試みた。その結果、マンモスのチトクロームbおよびCo-II遺伝子領域の各々約280および250塩基対の増幅に成功した。3.マンモス化石の系統上の位置を決定する為、現生のアフリカゾウおよびインドゾウの組織よりDNAを得たのち、マンモスのDNAを増幅に用いたプライマーを使ってDNAを増幅し、塩基配列の決定を行った。4.マンモス化石由来のミトコンドリアDNAのチトクロームb遺伝子領域273塩基対の塩基配列を決定した。現生のアフリカゾウの同一領域と比較した結果95.6%のホモロジーが得られた。同じ領域をヒトとアフリカゾウおよびマンモスで比較すると、ヒトとゾウ類2種の間で約71.3%のホモロジーがあり、ヒトとゾー類の系統の分岐年代を6500万年前に取ると、アフリカゾウとマンモスの系統の分岐は約900万年前となり、大旨、化石のデータと整合的な結果が得られた。尚、マンモスのDNAの塩基配列の決定は世界で始めての成果である。5.海生腹足類キサゴ類の現生種5種のミトコンドリアDNAの16sリボゾームRNA約1K塩基対とCo-II遺伝子約450塩基対の配列を決定し、分子系統樹を作製し、化石記録と形態にもとづく系統樹と比較し両者のデータを統合してキサゴ類の信頼に足る系統樹を作製した。また、各遺伝子についての分子進化速度を調べ、哺乳類の分子進化速度と比較した。貝類と哺乳類間で分子進化速度は大旨等しい事が判明した。
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