馬場は、ピテカントロプスVIII号頭蓋の復元をおこない、アフリカおよび中国の原人を含む資料と比較観察をおこなった。その結果、ピテカントロプスVIII号は、顔面が極めて短く幅広く平坦であり、頬骨が大きく膨隆し前外側方に張り出すなどの点でモンゴロイドの特徴を示した。この所見より、ピテカントロプスVIII号が東アジア人とオーストラリア先住民を含んだモンゴロイドの共通幹をなす化石であることが示唆された。平成6年度には年代学的結果とつき合わせてエレクトスの集団間変異や進化を一層明らかにする。 松村は、ピテカントロプスとの系譜関係が論議されているオーストラリア先住民42例の歯の形態学的データを採取した。合わせてオーストラリア先住民と近縁関係にあるニューブリテン島民188例のデータも採取し、サンプル数を充実させた。他の現生人類集団と比較した結果、両集団とも北方アジアよりも東南アジアのモンゴロイド系集団との系譜関係が示唆された。ピテカントロプスとの比較は平成6年度におこなう予定である。 松浦は、サンギラン出土動物化石の少量・微量成分についてICPを用いて分析した。その結果、フッ素以外のものではストロンチウムやマグネシウムなどがピテカントロプス化石の出土層準の判定に有効であることが確かめられた。平成6年度には、さらに動物化石の分析を進めるとともに、年代決定のためにピテカントロプス化石骨中の少量微量成分分析をおこなう予定である。
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