研究概要 |
アジアのホモ・エレクトス化石のなかで顔面の大部分が保存されている唯一の化石であるピテカントロプス8号(サンギラン17)頭蓋の復元を行い、はじめて最古のアジア人の顔を明らかにした。その復元に基づき頭蓋の基礎的観察と計測を行ったところ、以下の暫定的結論を得た。ピテカントロプスは、顔面の平坦さ及び頬骨の大きさで東アジア人と類似し、前頭骨の平坦ではオーストラリア先住民と類似するので、両者の共通祖先と見なすことが出来る。ピテカントロプス8号は咀嚼筋がきわめてよく発達しているにも係わらず、歯は余り大きくないので、湿度の高い環境で暮らしていた可能性がある。また、頸の筋肉の発達に関しては、あらゆる化石人類中で最大であり、非常に頑強な体格であったと言える。バンドン地質研究開発センターに所蔵されている5個のピテカントロプス化石資料に関しては、90万年前から70万年前の間に、時代が新しくなるほど歯のサイズが小さくなる傾向があり、ジャワ島のピテカントロプスの歯が退化する傾向が実際に突き止められた。歯の咬頭の大きさのパターンについては、現代人よりもはるかにアフリカの初期ホミノイドに類似することが明らかになった。 化石骨に含まれる少量・微量成分について、ICP発光分析およびICP質量分析により定量を行った結果、多くの元素が年代判定の指標となる可能性が示されたが、なかでも、サンギラン地域における化石骨資料の出土層準判定に特に有効な元素として、Na,Sr,などが挙げられた。本結果に、従来の指標であるフッ素を加えて、多元素による出土層準判定のための、信頼性の高い基準データが作成された。また、本研究からサンギラン地域出土人類化石のうち、いくつかの標本について、その層序関係がより明らかにされた。そうした年代学的成果に基づく考察から、ジャワ原人の漸進的進化の様相に関する若干の示唆も得られた。
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