従来の塩基配列決定法では400塩基対程度までしか決定できず、それ以上の解析では一旦制限酵素などで切断しそれぞれを個別に決定するが、各断片の順序情報は失われており、これを再編成するために多大な時間と手間がかかっている。そこで固定したDNA一分子を一端から順次切断することで、順序情報を維持した断片回収を行なうことを目的として実験的検討を行なった。その結果、高感度SITカメラ・画像処理装置を組み合わせた観察系にYAGレーザ(レーザピンセット・温度制御用)または窒素レーザ(DNA切断用)を導入するシステムを用い、DNA一分子の観察・伸張・切断・回収の各要素手法を開発し、切断断片の順次回収が可能であることを実験的に示すことが出来た。 溶液中のDNA分子は熱によりブラウン運動をしており、これはマニピュレーションの妨げとなる。溶液を凍結させるか、またアガロースゲルを用いることで、DNA分子の位置を固定することが出来た。この状態のDNAにYAGレーザを照射し、スポットの周囲の温度を上昇させ氷やゲルを融解させ位置制御が可能であり、また局所的酵素反応を行なえる可能性のあることを示した。DNA分子の一端に直径3μmのビーズをビオチン-アビジン反応により結合させたものをゲル中で電気泳動させると、ビーズはゲル中に固定されているため、DNA分子はビーズを一端として引き伸ばされていく様子が見られた。このDNA一分子に窒素レーザを照射することで、DNA分子の任意の位置を切断することが出来た。DNA一分子および断片の回収はガラス細管(内径18μm)による電気泳動で行なえることを実験的に示した。
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