1.受精卵からの胚発生の制御機構 まず、新たに胚発生に関する突然変異体を作出するために、品種金南風をMNU処理したM_2約1000系統についてスクリーニングを行った。まだ全系統についての調査は終了していないが、現在のところ新たに約30の単因子劣性の突然変異体が得られた。現在その詳細な表現型を調査している。既に得られている突然変異体間のF_2を作成し、2重劣性型の表現型を調べた。巨大胚(胚盤肥大の突然変異)に様々な突然変異体を交配した場合に興味ある結果が得られた。シュートや根の形態異常を示す突然変異体との2重劣性型では相加的な発現、即ち形態異常と胚盤の肥大が見られた。しかし、器官分化を示さず小さな胚となる球状胚突然変異体との2重劣性型では胚は球状となり、しかも胚の周囲の胚乳に大きな空隙が見られた。恐らく巨大胚突然変異は、胚ができる部分に大きな空隙を作るもので、その結果胚盤が肥大したものと考えられる。球状胚突然変異遺伝子が入った場合には胚の生長能力が制限されているため、胚は小さいままでその周囲に空隙ができたと考えられる。従って胚のサイズは胚乳との相互作用により決定されるのであろう。今年度更に多くの突然変異体同士の交配を行いF_1種子を得たので、来年度には胚発生に関与する遺伝子間の相互作用についてかなり明らかになると思われる。 2.不定胚発生における遺伝子発現 まず、カルスから不定胚及び不定芽を特異的に誘導する培養系の確立を試みた。サイトカイニンの種類と濃度を調節することにより、不定胚あるいは不定芽をそれぞれ高頻度で誘導する培養系が得られた。また抗原抗体反応を利用し、不定胚誘導時に特異的なタンパクを複数得ることができた。現在それらの解析を進めている。
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