これまでに得られた胚発生の突然変異の間の2重突然変異を作り、その表現型を解析した。その結果、器官分化の決定に関わる遺伝子は、器官分化位置の制御に関わる遺伝子が胚の大きさあるいは形態形成に関わる遺伝子に対して上位に働くことが明らかになった。また、器官分化位置に関わる遺伝子、胚の大きさに関わる遺伝子及び形態形成に関わる遺伝子の間の2重突然変異の表現型は、それぞれの両親の表現型の足し算になり、それぞれの遺伝子が独立に機能していることが推定された。巨大胚突然変異、小胚突然変異を用いて、胚の大きさの制御を詳細に解析したところ、その制御方法には2通りあることが明らかになった。1つは胚で機能する遺伝子によるもので、現在のところ突然変異により全ての器官を小さくする少なくとも3つの遺伝子座が見いだされている。他は胚乳の大きさを制御する遺伝子で、突然変異で胚乳が小さくなり、その結果胚盤だけが大きくなるものである。従って、胚の大きさは胚乳特異的な遺伝子と胚特異的な遺伝子との相互作用により決定されると考えられる。更に、無胚突然変異の1つを詳しく解析したところ、それが、胚乳の大きさを制御する温度感受性の遺伝子であることが明らかになった。高温では胚乳の発育が旺盛になり胚がつぶされて最終的に無胚となり、低温では胚乳がほとんど形成されず巨大胚となるものである。 Differential screeningにより、不定胚形成培地に置床後のカルスで特異的に発現するクローンを得た。そのクローンは、in vivoでは胚でのみ発現が見られ、発芽後のシュート、根、花では発現していなかった。恐らくこのクローンは器官分化ではなく、胚発生という独特な発生過程で特異的に発現する遺伝子であろう。
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