変異源処理したM2系統をスクリーニングすることにより、イネの胚発生に関わる単因子劣性の突然変異をこれまでに150系統同定した。それらの表現型の解析により、胚発生では少なくとも以下の5つの制御過程が働いていると考えられる。1.胚のパターン形成-これに関与する遺伝子の突然変異により基部のパターンの欠損などが生じる、2.器官分化の決定-突然変異により器官分化を全く示さないか1部の器官が欠損する、3.胚あるいは器官の大きさの制御-突然変異により巨大胚、小胚が生じる、4.器官の分化位置の制御-突然変異により器官が異常な場所に分化する、5.器官の形態形成(成熟)-突然変異により器官の発育や形態が異常になる。しかも、それぞれの制御過程には胚全体で機能する遺伝子と局所的に特定の器官でのみ機能する遺伝子の2種類が存在していることが明らかになった。胚の大きさの制御を詳細に解析したところ、その制御方法には2通りあることが明らかになった。1つは胚で機能する遺伝子によるもので、現在のところ突然変異により全ての器官を小さくする少なくとも3つの遺伝子座が見いだされている。他は胚乳の大きさを制御する遺伝子で、突然変異で胚乳が小さくなり、その結果胚盤だけが大きくなるものである。 Differential screeningにより、不定胚形成培地に置床後のカルスで特異的に発現するクローンを得た。そのクローンは、in vivoでは胚でのみ発現が見られ、発芽後のシュート、根、花では発現していなかった。恐らくこのクローンは器官分化ではなく、胚発生という独特な発生過程で特異的に発現する遺伝子であろう。
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