研究概要 |
Agropyron intermedium(2n=42,E_1E_1E_2E_2XX)の染色体を添加したコムギ系統を育成するとともにAg.intermediumに特異的に存在する反復配列をクローニングし、染色体in situハイブリダイゼーションによってAg.intermediumの染色体にマッピングした。 Ag.intermediumのゲノムDNAライブラリーを作成し、Ag.intermediumおよびTriticum aestivumの全DNAプローブとのディファレンシャルドの反復クローンを選抜した。制限酵素Eco 0109Iを用いたサザンハイブリダイゼーションの結果、1つは6800 bp、6200 bp、3600 bpおよび1850bpの反復単位を持つファミリーであり、もう1つは350 bpの反復単位を持つタンデム型ファミリーであった。さらに、後者はライムギのEco 0109I380 bpファミリー(Tomita et al.1993)と相同であった。350 bpファミリーはT.aestivumとAg.elongatum(2n=14,EE)との複二倍体系統にはハイブリッドしなかったので、AgropyronのEゲノムには存在せず、Xゲノムに由来する。しかし、350 bpファミリーはAg.intermediumの10対の染色体の末端にハイブリッドしたことから、E_1またはE_2ゲノム染色体の少なくとも3対にXゲノム染色体が転座したと推定される。 7種類のAg.intermedium染色体添加コムギ系統を育成し、350 bpファミリーとのサザンおよび染色体in situハイブリダイゼーションを行った結果、350 bpファミリーは添加染色体Aの短腕末端、添加染色体Bの長腕末端、添加染色体CおよびDの両腕末端に存在し、添加染色体E、GおよびHには存在しなかった。添加染色体Cは明瞭なC-バンドを持つので、E_1またはE_2ゲノムの染色体に350 bpファミリーを持つXゲノム染色体末端部分が転座したものと考える。以上のように、350 bpファミリーはC-バンドが不明瞭なXゲノム染色体の標識として使用できる。
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