研究概要 |
イネ種子貯蔵タンパク質の改良には、その80%を占めるグルテリンに関する遺伝子資源の開発が不可欠である。本研究では、1.有効な探索法の確立、2.変異の探索、および3.得られた変異の遺伝様式の解明を行った。 1.SDS-PAGEおよびIEFのゲル作製および泳動条件を検討した。SDS-PAGEではアクリルアミド/ビスアクリルアミド=15-25%/0.05-0.67%の濃度勾配を有するゲルを用いて、最も鮮明な泳動像を得ることができた。また,1%乳酸でグルテリンを抽出後、アンフォライト(pH3.5-10/6-8/9-11=2/2/1)を含むアクリルアミドゲルを用いて、単粒分析が可能でかつ多量の検体を迅速に分析できる水平平板式IEF法を確立できた。 2.九州大学に保有する国内外のイネ品種約2,000系統を用い、種子貯蔵タンパク質のSDS-PAGEおよびIEF分析を行った。酸性および塩基性両サブユニットはそれぞれ見かけの分子量の異なる4本のバンドに別れ、また、酸性サブユニットは12本前後、塩基性サブユニットは9本前後の等電点の異なる分子から構成されるが、品種間で見かけの分子量や等電点に多様な変異が認められた。二次元電気泳動(IEF/SDS-PAGE)分析により、両サブユニットを構成するポリペプチドの分子量とpIの対応関係を明らかにすることができた。個々のIEFバンドはそれぞれ単一のポリペプチド分子からなることが判明し、グルテリン遺伝子の変異の探索および遺伝子分析には等電点分析が有効であることが示された。 3.水稲品種「金南風」と「IR24」とを交配し、両品種間で欠失変異が認められたIEFバンドについて、それらを支配する遺伝子の遺伝様式を解析した。個々のIEFバンドは、各々異なる不完全優性遺伝子によって支配され、第1および2染色体上でそれぞれクラスターを形成する構造遺伝子であることが明らかとなった。
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