研究概要 |
1.水稲におけるNの動態 (1)地上部N含有率と相関関係の高い葉身の葉色値は,葉位と部位(先端と基部,左葉半と右葉半)により一定の規則性をもって変動することを国内外の6品種を供試して再確認した。 (2)特定根に吸収させた^<15>Nは,特定根と連絡する特定の縦走維管束によって葉身の葉半に運ばれ,葉身の縦走維管束から発する横走維管束による^<15>Nの葉半間の移行の量は極めて少ないことを明らかにした。 (3)左右葉半で濃い側の葉半幅は一般に狭いが,希に葉半幅に差の無い品種が存在し,その品種も左右葉半の葉色の濃度は異なるため,葉半の葉色の濃度差は葉幅(葉面積)差に基づくものではないと推定した。 (4)葉色の濃い葉半側がもつ冠根の量は,淡い葉半側がもつ冠根の量より多い傾向を確認した。この差異がNの吸収量を変えて左右葉半の葉色の違いをもたらしている可能性が大きいと推定した。 2.コムギとトウモロコシにおけるNの動態と葉位による葉半広狭の規則性 (1)コムギとトウモロコシの葉色の地上部窒素含有率との関係は,水稲と同様にそれぞれ高い正の相関関係を示した。葉色について葉位と葉身の部位にみられる傾向も,水稲と同様であることを確認した。 (2)葉位による葉半広狭の左右の交互性も,水稲と同様の規則性を認めたが,コムギでは下位葉で,トウモロコシでは上位葉で規則性が乱れやすいことを明らかにした。 (3)葉位による葉半広狭の左右の交互性の乱れは発芽時の種子の置床方向や遠心処理によって変わることから,規則性の乱れは葉の分化時前後における生長調節物質の分布の偏りに基づくものと推定した。
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