研究概要 |
1.水稲における窒素の動態 ^<15>N-尿素を3号分げつ(3号分げつ由来の2,3次分げつを含む)に散布し,3日後からそれらの分げつを遮光して無効化した場合に,無効分げつの^<15>Nが主茎ならびにその他の有効分げつへ転流して生育に影響を及ぼすか否かについて調査した.その結果,3号分げつの無効化によってその他の有効分げつは草丈,葉色が無処理の比較区より優ったが,無効化した分げつからの窒素の転流による積極的な効果は確認できなかった.他の有効分げつの生育への影響は,分げつの制限による土壌窒素の分配量の差に基づくものではないかと見られる. 2.コムギにおける窒素の動態 マメ科作物(クロタラリア属植物等)を前作として栽培して鋤込んだ際の,後作コムギに対する窒素吸収への影響を検討した.その結果,マメ科作物の鋤込みによって地上部の生育が優ったが,以下部の生育はアレロパシー的な影響が現れて抑制された.また鋤込み材料のC/N率の差異によってコムギの窒素の吸収経過が異なり,C/N率が高いと初期における窒素の吸収が抑制され、茎数の確保が劣ったが,生育後期において窒素の発現傾向が見られることを明らかにした. 3.トウモロコシにおける窒素の動態 施肥量を変えて葉位別葉半の窒素の動態について調査し,水稲ならびにコムギで確認された傾向とほぼ同様の結果を得た.即ち,葉の巻方向は葉位に対応して左右交互となり,外葉半の葉幅は狭く,葉色が濃く,窒素含有率と葉緑素含有率が高く,光合成速度が優ることを確認した.葉半におけるこのような差異は,葉面積の差異(外葉半が狭い)も要因と思われるが,稲でみられた各節位の葉半側ごとの根量の違いによる影響も推測される.
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