1.新梢に花芽をつけにくい‘新水'と比較的花芽をつけやすい‘幸水'の新梢の頂芽および頂部近傍の側芽を5月末より8月にかけて経時的に採取し、解培顕微鏡(マイクロウォッチャー)で生長点を観察した。筑波における‘新水'および‘幸水'の形態的花芽分化期が7月初旬であることを確認した。また‘新水'の新梢側芽の花芽分化は著しく少なかった。 2.これら成長点を常法で固定、包埋、電子染色を行い、透過型電子顕微鏡で観察した。頂端分裂組織の細胞の細胞活性が高いことが伺えたが、花芽と未分化の芽、または葉芽との間の質的な違いを明らかにするには至っていない。 3.被覆栽培下においては‘幸水'も花芽分化しにくく、花芽が減少する。これらの樹に矮化剤のパクロブトラゾール、天然型アブシジン酸を散布すると、新梢の生長を抑制したが、その効果は前者が高かった。またこの両生長調節物質ともに花芽の着生を増加させたが、その効果もパクロブトラゾールの方が高く、露地でのアブシジン酸の方が効果が高いこととは異なった。これらの点からパクロブトラゾールは栄養生長の盛んな条件下で新梢の生長を抑制して間接的に花芽分化を促進し、一方アブシジン酸は好適生長条件下でも直接的に生長点に作用して花芽分化をひきおこすものと示唆された。 4.今後‘幸水'と比較しつつ‘新水'の生長点の花芽分化過程における生長点の微細構造の変化、花芽と葉芽の細胞の質的な違いを追求するとともに、被覆条件下、さらには生長調節物質により影響をうけた花芽分化過程についても、これらの変化を追求する予定である。
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