モモとモモの矮性台木であるユスラウメ、ニワウメの新梢から2、4-D 10mg/l、カイネチン1mg/lを加えたMS培地でカルスを誘導した。カルス誘導培地に比べると、2、4-D濃度を1mg/l、カイネチン濃度を0.1mg/lに下げたMS培地の方がモモとニワウメのカルスの生長は良好であり、ユスラウメでは培地間でカルスの生長に差が見られなかったので、以後の実験では、2、4-D濃度を1mg/l、カイネチン濃度を0.1mg/lにしたMS培地を用いた。同じ組成の液体培地10mlを入れた試験官に約2mlのカルスを取って、毎分60回の速度で往復振盪培養を行った。培養条件は25℃、3000luxとし、1カ月間で新しい培地に移植した。15日目と30日目に、試験管を振盪器からはずし、20分間静置して、細胞を沈降させ、settled cell volume(SCV)を測定した。その結果、SCVで見た相対生長速度はモモで0.74%/日、ユスラウメで2.31%/日、ニワウメで1.00%/日であり、モモの細胞の増殖速度が劣った。培地の糖組成やホルモン組成等を変えても、モモ細胞の増殖速度はユスラウメ細胞の増殖速度には及ばなかった。ユスラウメを培養すると培地は暗褐色となり、ニワウメを培養すると淡褐色となったが、モモ培地では褐変は認められなかった。培地が褐変するのは細胞からフェノール物質やカロースが放出されるためと考えられるので、現在、高速液体クロマトグラフによる褐変物質の同定を行っているところであり、今後、褐変物質がモモ細胞の生長に及ぼす影響を明らかにする予定である。
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