研究概要 |
モモとモモの矮性台木であるユスラウメ、ニワウメの新梢から2,4-D 10mg/l、カイネチン1mg/lを加えたMS培地でカルスを誘導した。誘導したカルスを2,4-D濃度を1mg/l、カイネチン濃度を0.1mg/lに下げたMS培地で継代培養した。継代培地と同じ組成の液体培地10mlを入れた試験管に約2mlのカルスを取って、毎分60回の速度で往復振盪培養を行った。培養条件は25℃、3000luxとし、2週間ごとに新しい培地に移植した。ユスラウメの細胞は盛んに増殖したが、モモとニワウメの細胞の増殖速度は劣った。約1カ月間培養を続けて細胞を増殖させた後、試験管を振盪機から外し、内容物を孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用いて濾過した。この濾液5ml、並びに121℃で20分間滅菌したMS培地(0.8%の寒天を含む)を50〜60℃に冷却したもの45ml、計50mlを200mlの培養ビンに入れ、よく攪拌して、固化させた。この培地にモモ、ニワウメ、ユスラウメのカルス約1gを移植し、2カ月間培養した。その結果、モモ、ニワウメ、ユスラウメのいずれにおいても、培地に加える培養濾液の種類が異なっても、生長に有意な差は認められなかった。この結果は、モモのカルスとその矮性台木であるニワウメのカルスを接触させて培養した場合にモモのカルスの生長が劣るという、既に明らかにした結果とは一致しなかった。その原因として、矮性台木由来のカルスから放出され物質が50〜60℃の熱で分解してしまうことが考えられた。
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