本年度は、モモ亜属におけるRAPDマーカー法の有効性を検討するとともに、スモモ亜属のDNA変異の検出を行ない、類縁関係を検討した。 モモ、アーモンドの野生種と栽培種について、RAPDマーカー法の適用を検討した結果、多型の出現頻度が高く、識別が容易なプライマーを選択することにより系統分類が可能と思われた。クラスター分析の結果、モモ亜属ではモモ(P.persica)とその近縁野生種の2群に大別された。P.persicaはバンドの共有率が高く、遺伝的変異は小さいことが認められたが、近縁野生種はバンドの共有率が低く遺伝的変異に富んでおり、P.persicaとゲノムの類似度が明らかに異なっていた。ネパール、ブータンに自生する光核桃は、種内変異は小さいが、モモ、ノモモ、アーモンドなどとはかなり異なっていた。 スモモ亜属については、アンズとスモモを中心に系統分類を試みた。アンズは35品種を供試し、分析した結果、総数で58個のRAPDsが検出され、ヨーロッパ・西アジア品種群と日本の品種群とに大別された。種内の平均遺伝距離は小さいが、例外として白杏、仁杏、アルパインプラム、モウコアンズなど特異のものが認められた。スモモは種内の平均遺伝距離は大きく、ニホンスモモとヨーロッパスモモの品種群に大別された。 次年度は、サクラ亜属の類縁関係を検討するとともに、モモ、スモモ、サクラなどサクラ属全体の系統進化について研究を進めたい。
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