研究概要 |
本年度はモモ亜属とオウトウ亜属を中心に系統分類を実施するとともに,オルガネラDNA領域を用いたPCR-RFLPによりサクラ属全体の系統分類と進化についても検討を加えた。また,これまでに得られた研究成果をまとめ,論文などに発表した。 スモモ,ウメ,アンズに関しては,人工交雑した種間雑種個体などを加え,類縁関係を検討した結果,これらはいずれも相互に交雑して遺伝形質に関与しながら,今日の品種が形成されたと思われる。もも亜属し関しては,スモモ亜属に近い仲間として認められたが,他のグループとは少し離れていることがわかった。またモモ栽培種の品種系統間では多型性は小さいと思われる。オウトウ亜属はスモモとモモの仲間から古い時代に分化して,今日のサクラとオウトウのグループが形成されたものと思われる。従来,このサクラの仲間に属しているとされるユスラウメとニワウメは,本実験の結果,スモモとモモのグループに属することが認められたので,両者との類縁関係を更に追求していく必要があろう。ユスラウメとニワウメは,スモモやモモと接木親和性が認められるが,オウトウとの親和性は低いので,本試験の結果とよく合致している。なお,オウトウ品種の系統分類は,阪神大震災の影響を受け,現在中断している。早く復旧し,検討を加えて行きたい。
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