青果物のエチレン生成誘導機構を電気生理学的に解析した。 1.直流電流処理がキュウリ、カボチャおよびトマトのエチレン生成を著しく誘導した。とくに、キュウリでは10分間の通電でエチレン生合成の律速酵素であるACC合成酵素とACC酸化酵素が急速に誘導された。通電処理はポリガラクチュロネースとフェニールアラニンアンモニアリエースも著しく誘導したが、エチレンの作用性阻害剤の同時処理実験により、これらの酵素は通電処理により誘導されたエチレンによる二次誘導であることが判明した。 2.通電処理の作用部位を特定するために、キュウリについてマルカート・アルゴリズムによる膜インピーダンスの数値解析を試みたところ、細胞外抵抗、細胞内抵抗及びトノプラスト容量に大きな変化がみられ、エチレン生成の誘導の作用部位はトノプラストと推定できた。 3.キュウリからトノプラストミクロゾームを調製し、通電処理に伴うATPase活性とプロトンポンプ活性変化を測定したところ、通電処理によりプロトンポンプ活性が著しく低下しており、エチレン生成の誘導要因としてプロトンポンプの活性低下が関与している可能性が伺えた。 4.通電処理により誘導されたACC合成酵素をコードするcDNAライブラリーを作成したところ、少なくとも3種のACC合成酵素が通電により誘導されていることが判明した。現在、引き続づきこれらのcDNAの塩基配列の決定と、既知のACC合成酵素cDNAとの相同性の確認を行っている。 5.本研究助成により、本年度の計画はcDNAをプローブとしてNor‐thern Blot分析を除いて終了し、当初の予定以上の成果をあげることができ、エチレン生成の誘発機構の解明をかなり進展させることができた。次年度に向けて、エチレン生成の遺伝子発現研究を遂行中である。
|