本年度はアマリリス、グロリオサおよびチューベローザを供試し、主として制御環境下および温室内での生育反応を調査した。 アマリリスー球根の低温処理による促成栽培が確立しているが、もともと熱帯性である本種にとっての低温の意義は明かでない。本年度は球根内での花芽の発達を経時的に調査した結果、低温が球根内の第一花芽を健全のまま維持しているのに対し、高温は第一花芽をアボートし、花茎を抽出するのは第二花芽であることが明かとなった。一方、鱗片挿しにおける植物ホルモンの働きについても実験を行い、子球の形成にはサイトカイニンが促進的に、またオーキシンは抑制的に作用していることが確かめられた。 グロリオサー温室内で生育させた植物体に形成された塊茎を経時的に掘り上げ、一定温度条件下における萌芽の消長を調査した。本種塊茎にはいわゆる休眠は存在せず、塊茎の発達過程においてのみ、萌芽遅延が認められた。塊茎の未熟時期と休眠との関連については次年度から行う植物ホルモンの分析を通じて明らかにしていく予定である。制御環境下における生育反応から30℃の高温では塊茎の発達が抑えられ、逆に20℃では促進されることも明らかになった。 チューベローズー台湾などでは、需要の関係から本種の抑制栽培が行われている。そのための球根冷蔵処理が実行されているが、この方法は経験的なもので、学問的な裏付けはいまだになされていない。アマリリスで行った方法と同様に低温処理の影響について実験を行った結果、本種の花芽の発達に低温は全くといってよいほど関与しておらず、ただ、高温貯蔵の際におこる球根の消耗を抑えているにすぎないことが示唆された。次年度はさらに詳しい検討とともに、内生植物ホルモンの調査を行って、本種の休眠についても明らかにしていく予定である。
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