つぎの4点に渡って研究を行ない、成果を取りまとめた。 第1に桂離宮庭園景観シミュレータに遠景の西山を国土地理院による数値地図のデータ(50mメッシュ)を利用し、AMAPの地形オブジェクトに変換して加えた。これによって約10km離れた西山と桂離宮庭園内の近景の樹木を一度にレンダリングすることができ、庭園の景観シミュレーションのリアリティを向上できた。また、現在、桂離宮の南西で都市計画道路が工事中であり、高さ規制の緩和によって、庭園景観にそぐわない建築物ができる可能性も考えられたので、道路ぞいに建築物ができた場合の庭園景観阻害についても検討してみた。その結果、建築の見え方は極端なものではないが、天の橋立てから笑意軒方面を望むと橋の重なりが見えるのが本庭園の大きな特徴であり、この視線方向に建築の見える方向が一致することから、いままで良好な景観を維持できた桂離宮庭園景観として大きな問題であるとも判断された。 第2に音環境の庭園景観に及ぼす影響の重要性に鑑み、桂離宮庭園内の等価騒音レベルの分布を明かにし、鼓の滝の音質などについて明らかにした。 第3に本庭園の庭石の石質について調査し、そのデータベースを作成した。 第4に本庭園の池の形、樹木と庭石、庭園建築の分布などデザイン要素について調査し、桂離宮をはじめ日本庭園全般のデザインにフラクタル性が内包されていることを明らかにした。 第5にこれまでの成果が特にCG画像や音情報などを含んでいるため、研究成果の発表としてデジタルデータによるマルチメディア出版を行なった。
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