研究概要 |
昆虫の幼若ホルモン(Juvenile Hormone=JH)の遺伝子発現の調節を明らかにする目的で.ホソヘリカメムシ(Riptortus clavatus)のシアノプロテイン(CP)のJHによる合成調節について調べてきた。CPの2つのサブユニットのうちαはJHにより合成が誘導され.βは合成が抑制される。これらは夫々のcDNAをプローブとして行なったノーザンブロット解析により.トランスクリプションレベル即ちmRNA合成レベルで調節されているものと推定された。αβcDNAの塩基配列は相互に70%の相同であり.両者のゲノムの比較.特に上流域の比較はJHに対する両遺伝子の反応との関連で興味ある情報を提供するものと思われる。我々は本年度の実験としてホソヘリカメムシ脂肪体から抽出したDNAからゲノムライブラリーを作製し.CPαおよびβcDNAをプローブとしてスクリーニングを行ない.CPα及びβゲノムDNAを含む複数のクローンを得た。その中のいくつかについて解析を進めたところ、α,βはそれぞれ全長6.0kpbと8.1kbpの中に少なくとも11のエクソンに分割された構造が明らかになった。エクソン断片の大きさと並び方はα,βで類似しており、両者の全体長の違いはイントロンとくに第1イントロンの長さの違いによることが明らかとなった。このα,βCP遺伝子の基本構造はカイコの貯蔵タンパク質SP-1,2の遺伝子構造とよく似ており.ホソヘリカメムシCPはカイコSPと同一ファミリーに属する遺伝子であることが明らかとなった。現在これらの遺伝子とその上流域を含め塩基配列の解析を行なっている。
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